『病院の小さな白いベッドで語られる真昼の御伽話』
アラビアンナイトは王妃が命を長らえるために夜伽の場で王に語った物語であった。
この映画は大怪我を負ったスタントの青年が幼い少女と紡ぐ、死へ落ちていく為に真昼に語られる物語である。
初見では(過去ロケ地を旅行で偶然訪れていたせいかもしれないが)幻想の場面こそリアルで、
逆に小さなカーテンで仕切られたベッドの上の青年と少女の場面の方が、ロマンチシズムに溢れているように感じた。
物語は少女の希望も取り入れられつつ、死へと死へと向かって語られ続ける。
少女の演技が特にいい。少女が、見ている観客にとっても抱きしめたくなるような存在になっていく。
この少女は幼いがゆえの純粋さで悲しい現実を受け止めてきた。
そして今はただ、お兄ちゃんが大好き、なのだ。ただそれだけ。少女の「殺さないで」という言葉が胸に突き刺さる。
落ち続けていた青年はここで、落下のスピードを限りなくゼロに近づかせる事が出来るようになる・・・。
リー・ペイスの美しさも見逃せない。セルのキャスティングも好きだったが、役者選びに間違いが無い。
何度も見ると幻想シーンの役者が現実ではどの人なのだとか、楽しい発見もたくさんあり、
二回目以降の方が美しいロケーションにどっぷり浸かれた。
ひとつわからないのはこの映画が誰へのものであるのかという事。
誰かへの尊敬か悔悟か、メッセージなのか。
少女はその後いろいろな映画を見て、ロイがすべてに出ていると語る。
すべての映画の中のロイを見つける。それが、この疑問への答えなのかもしれない。