『いい出来の女優映画』
蒼井優が、「シャバだわ シャバだわ」という11PMのオープニング風のメロディー(小林信彦の
小説「唐獅子放送協会」での、今週の出所者コーナーのテーマソング)を口ずさむ冒頭から快調
なロードムービー。
タナダユキ監督は蒼井優以下、出演者から等身大といっていいナチュラルな演技を引き出し、
演出プランが必ずしも成功していない場面もあるものの、作品の肌触りと蒼井優の持っている
個性がうまく調和し、観る人に小さな種を植えつけるような佳作、といっていい出来の映画に
なっています。
主演をまかされた蒼井優は、森山未来を前に、自分の身の上話から彼への愛を告白する
シーンを頂点として、感受性豊かな演技をみせ、この映画に大きな魅力をあたえています。
また、なによりも、登場人物の入れ替わりの激しい物語を、主役として一人でささえきったこ
とに、この女優の力量を感じます。
この映画では、カメラが最後に、アップで彼女に近づいていき、そのシーンを終わらせる場面
が非常に多いのですが、そういった場面では、彼女は画面に独特な余韻を残しており
この女優の資質の高さと可能性を感じさせます。
久々に腰の据わった演技の、出来のいい女優映画を見せてもらった、と感じさせてくれる作品